お昼めん」と何度

2017年03月15日

「ナイト……、だめ、だめだって。これは、食べ物じゃないんだ。」

独りで何舐めてんだよ~、ずるいぞ、夏輝。
おいしそうな甘い匂いに、思わずたまらなくなって、夏輝の前しっぽを甘噛みしたら、夏輝がうめいた。

「あぅ……ああぁ……もう……ナイトったら……うっ。」

夏輝は文太を起こさないように、そうっと足元を四つん這いのままで風呂場に向かった。
狹い風呂場で、俺の身体にシャンプーを振りかけ「HKUE 酒店ごも言いながら夏輝は泣いていた。
狭い部屋の向こうでは、夏輝の好きな文太がペンキ塗りで疲れて眠っていた。

「ナイトに、顔射しちまった。ごめんなぁ……」

俺を綺麗に洗ってくれながら、夏輝は哭いた。
夏輝の前しっぽが、ふるりと薄い桃色になって、文太が好きだと揺れていた。
夏輝……。一度、表で同じくらいの奴に声を掛けたら「まんまと、ぶーぶー」しか言えないのに驚いた。余りの幼さにびっくりして思った。
俺、少なくともわんこの世界では、お利口さんに入る部類かも。
俺はちびだけど不思議と色々なことを考えていたし、自分で言うのもなHKUE 酒店んだけど俺の「おひさまのおふとん」夏輝の気持ちがすごくよくわかった。
言葉も「わん」だったけど、切ない夏輝の心を知って、俺はそれからずっと夏輝と文太の事を考えていた。
俺の顔に顔射してしまった夏輝は、酷く落ち込んで枕に顔を埋めた。一晩中声を押し殺して泣いた夏輝は、翌日の朝に起きて来た文太が驚くほど目を腫らしていた。
俺の中で、男前の父ちゃんの血が騒ぐ。「泣くなよ、夏輝。」って言ってやりたかった。
一宿一飯の恩義を受けて、お世話になった夏輝が泣いているのを見過ごしたりはできない。
夏輝は時々、夜、哀しそうに前のおしっぽを立ち上げて「文太ぁ…」と呼んで涙をこぼした。
俺が一度、心配して膝にすり寄ったら、もっと泣いてしまったのであれから俺は見て見ない振りをしている。
俺は俺の大好きな「おひさまのおふとん」が、笑顔を取り戻してくれるためなら、なんだってする。
俺の背中で、俺の「おひさまのおふとん」が、ああーっと小さく啼いた。

「夏輝……くすん。」

俺は早く大きくなりたい。
こんなちっぽけなわんこじゃなく、鼻面に顔を寄せて涙を舐めとってやれる位、でかくなりたい。
そうしたら、思いっきり夏輝を抱きしめて、俺はニヒルにこういうんだ。

「俺の「おひさまのおふとん」夏輝。泣くなよ。お前に涙はHKUE 酒店似合わないぜ。俺が一生傍にいるじゃねぇか。」

……俺、かっこいい。


俺はそうっと夏輝が大学へ行った後部屋を抜け出し、町中を探し回ってある祠を探していた。
由緒あるおんぼろアパートの中庭で、猫たちは集会を開く。野良の犬猫が、無事に育つためには情報の共有が必要なのだ。
俺がもう少し大きくなったら移るはずの小屋で寝をしていた時、猫たちの話を聞いたんだ。



Posted by 藍 at 13:10 Comments( 0 )